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俺が口を開けかけるとレナはそれをさえぎって
こういった。「早くきてほしいの」吐息まじり
に受話器越しから彼女の声が俺の鼓膜を振動させる。
俺は少し間をあけて「わかった。」と言った。
財布、ケータイ最小限の貴重品をポケットに
流し込むと俺はマンションを後にした。
彼女の家には一度だけ一回生のころの学園祭でのチアリーダー
の披露会の打ち上げで訪れていた。記憶は曖昧だったが
地下鉄に乗り込んだ。深夜2時でも東京の渋谷は眠らない。
彼女の家は六本木のクラブの近くのとあるアパートだ。
六本木ともあり正確にはしらないが相当な家賃だろう。
いつか話の流れで彼女の両親は外資系の証券マンであり
彼女は大金持ちの家の令嬢だと聞いたことがある。それと
高校時代の彼女の謎の噂を結びつけることは俺には到底
無理な話であった。
相沢・・・そうポストに表札をだしてあった。か細く
弱々しい文字である。彼女のはつらつとした笑顔とは
かなりギャップがあった。702か。俺は無意識のうちに
そう呟いていた。エレベータに乗り込むと疲れ果てた顔の
30代くらいの男性が乗り込んできた。俺はここの住人でも
ないので挨拶はあえてしなかった。むこうも知らん顔を
した。都会生活によくありがちな希薄な関係ってやつだろうか。
それがここに今現れている気がする。
彼は5階ボタンを押していた。どうやら俺より先に下りるんだ
ろうなと思う。そして5階になるとその男性はそそくさと
出て行った。だが、ポケットからなにか白い紙がひらひらと
舞って俺の足元に落ちた。
俺は落としましたよ!といおうとおもってエレベータを抜け出したが男性は既に長い廊下の角を曲がり消えていた。
仕方ねーな。と俺は呟くと紙切れを手にとってみた。その紙きれは
メモ帳を破ったものである。リング状の形をしたものから無造作に
引きちぎられたのだろう。中身をみた瞬間俺は背筋に悪寒を覚えた。その中身には相沢の身長からスリーサイズそして趣味や好きな
男性のタイプなどがことこまかに書かれていたのである。
「おい。。こいつはなんなんだよ。」俺はそう思った。
いったいあの男性は。。俺はとにかく相沢の部屋へと急いだ。
ベルを鳴らすと相沢は少しやつれた表情で顔をだした。
「急に呼び出しちゃってごめんね。ほんとに着てくれたんだ。」
いつもの笑顔で彼女はそういった。
「まぁ俺も暇だったし、それに最近夜型だからな。」
「何かコーヒーでも飲む?」彼女は気を利かしてくれてそういった。久しぶりの彼女の部屋のぐるりを見渡した。ピンク色がメインでいろいろな人形やチアリーダーでの活躍を称える賞状が飾って
あった。写真はすべて大学でのものであった。前に行ったときは
元カレとの幸せいっぱいの2ショットもあったがそれは剥がされて
いた。「おう。ありがとう。座っていいかな?」相沢がうんというのをキッチン越しに確認して俺はムートンが敷き詰められた高級
そうなソファーに座った。相沢はコーヒーカップのかちゃかちゃ
という無機質な金属音をたてていた。俺はすこし声をあげて
言った。「なぁ。こんな時間に俺を呼ぶなんてことはなんか
用があるんだろ?」しばらく間があって相沢はコーヒーカップを
二つもってきて横に座った。「うん。まーそかな。」
「そーかなっておまえな。」俺はただでさえ心臓の鼓動がドクドク
音をたてているのに彼女は俺を弄ぶ。「タバコ吸っていいか?」
「いいよ。」俺はわりぃなという表情でマイルドセブンをくわえる。しゅぼっというライターの音がコ気味いい。
「ああ。そーだ。これ借りてたCD.ついでだから返すよ。」
俺は昔彼女に借りたDJのMIXCDを差し出した。「あぁわすれてた。
春樹君に貸してたんだった。」そのとき俺はポケットに
さっきの気味の悪い男性の紙切れの感触を指先に感じ取った。
しかし俺は相沢には話さないことにした。
少し沈黙を経て彼女はこういった。「ねぇ。お願いがあるの。」
彼女は上目遣いでそう俺に言った。意識していなかったが彼女は
キャミ一枚ととても肌の露出を強調した服装であった。髪の毛は
おろしてセミロングのストレートヘアになっていた。少しスパイシーな香水のに匂いがつんと俺の鼻をかすめる。「なんだよ?」
俺は彼女の目をみないでいった。下心を見透かされたくなかった
からだろうか。自分ではわからない。ただ見ることができなかった
のだ。彼女は俺の顔に急接近してきた途端に踵をかえし
ソファからたつと7階の出窓のカーテンを無造作に引いた。
「私、2週間前から5階の人につけられてる気がするの。」
俺は彼女の横に行って窓の外をのぞいた。すると光の点滅の
ようなものが見えた。「あれは。あれは望遠鏡じゃねーか?」
誰がみても一目瞭然であった。「なるほど。それで俺におまえの
ボディガードを依頼するためここに呼んだってわけか。」
俺は少しの安堵と残念な気持ちが入り混じった。そして少し
下心があった自分にへこんでいた。「まぁそういうことね。」
「でもなんで俺に頼むんだよ?」身長は184cmあるがお世辞に
もがたいがいいとはいえない俺になぜ彼女は依頼してきたんだろう。そう思って率直な思いを彼女にぶつけてみた。
「春樹クンは私のことを理解してくれてる気がしたの。
あくまで私の勘だけどね。」そういって彼女はカーテンを閉めて
俺の顔を覗き込んだ。いつもの笑顔だがその裏にふとした憂いの
表情が見え隠れする。彼女の闇を俺は感じ取った。
よくミステリアスな女の子はもてるといったことを高校時代
にツレと話していたがまさに彼女はその代表といった感じだった。
俺は自信はなかったが、彼女に近づきたいという思いから首を
縦に振った。「じゃあ話は早いな。」俺は彼女がつけられてる
ということを知っている以上さっきの紙切れを見せることにした。
「これさっき俺が乗り合わせたエレベーターの男が落とした
もんだ。おまえのこと異常なくらい調べ上げてるぜ。」
相沢の顔をみないで俺はそう言い放った。彼女は沈黙しながら
ただ呆然と立っていた。
to be continued....
俺が口を開けかけるとレナはそれをさえぎって
こういった。「早くきてほしいの」吐息まじり
に受話器越しから彼女の声が俺の鼓膜を振動させる。
俺は少し間をあけて「わかった。」と言った。
財布、ケータイ最小限の貴重品をポケットに
流し込むと俺はマンションを後にした。
彼女の家には一度だけ一回生のころの学園祭でのチアリーダー
の披露会の打ち上げで訪れていた。記憶は曖昧だったが
地下鉄に乗り込んだ。深夜2時でも東京の渋谷は眠らない。
彼女の家は六本木のクラブの近くのとあるアパートだ。
六本木ともあり正確にはしらないが相当な家賃だろう。
いつか話の流れで彼女の両親は外資系の証券マンであり
彼女は大金持ちの家の令嬢だと聞いたことがある。それと
高校時代の彼女の謎の噂を結びつけることは俺には到底
無理な話であった。
相沢・・・そうポストに表札をだしてあった。か細く
弱々しい文字である。彼女のはつらつとした笑顔とは
かなりギャップがあった。702か。俺は無意識のうちに
そう呟いていた。エレベータに乗り込むと疲れ果てた顔の
30代くらいの男性が乗り込んできた。俺はここの住人でも
ないので挨拶はあえてしなかった。むこうも知らん顔を
した。都会生活によくありがちな希薄な関係ってやつだろうか。
それがここに今現れている気がする。
彼は5階ボタンを押していた。どうやら俺より先に下りるんだ
ろうなと思う。そして5階になるとその男性はそそくさと
出て行った。だが、ポケットからなにか白い紙がひらひらと
舞って俺の足元に落ちた。
俺は落としましたよ!といおうとおもってエレベータを抜け出したが男性は既に長い廊下の角を曲がり消えていた。
仕方ねーな。と俺は呟くと紙切れを手にとってみた。その紙きれは
メモ帳を破ったものである。リング状の形をしたものから無造作に
引きちぎられたのだろう。中身をみた瞬間俺は背筋に悪寒を覚えた。その中身には相沢の身長からスリーサイズそして趣味や好きな
男性のタイプなどがことこまかに書かれていたのである。
「おい。。こいつはなんなんだよ。」俺はそう思った。
いったいあの男性は。。俺はとにかく相沢の部屋へと急いだ。
ベルを鳴らすと相沢は少しやつれた表情で顔をだした。
「急に呼び出しちゃってごめんね。ほんとに着てくれたんだ。」
いつもの笑顔で彼女はそういった。
「まぁ俺も暇だったし、それに最近夜型だからな。」
「何かコーヒーでも飲む?」彼女は気を利かしてくれてそういった。久しぶりの彼女の部屋のぐるりを見渡した。ピンク色がメインでいろいろな人形やチアリーダーでの活躍を称える賞状が飾って
あった。写真はすべて大学でのものであった。前に行ったときは
元カレとの幸せいっぱいの2ショットもあったがそれは剥がされて
いた。「おう。ありがとう。座っていいかな?」相沢がうんというのをキッチン越しに確認して俺はムートンが敷き詰められた高級
そうなソファーに座った。相沢はコーヒーカップのかちゃかちゃ
という無機質な金属音をたてていた。俺はすこし声をあげて
言った。「なぁ。こんな時間に俺を呼ぶなんてことはなんか
用があるんだろ?」しばらく間があって相沢はコーヒーカップを
二つもってきて横に座った。「うん。まーそかな。」
「そーかなっておまえな。」俺はただでさえ心臓の鼓動がドクドク
音をたてているのに彼女は俺を弄ぶ。「タバコ吸っていいか?」
「いいよ。」俺はわりぃなという表情でマイルドセブンをくわえる。しゅぼっというライターの音がコ気味いい。
「ああ。そーだ。これ借りてたCD.ついでだから返すよ。」
俺は昔彼女に借りたDJのMIXCDを差し出した。「あぁわすれてた。
春樹君に貸してたんだった。」そのとき俺はポケットに
さっきの気味の悪い男性の紙切れの感触を指先に感じ取った。
しかし俺は相沢には話さないことにした。
少し沈黙を経て彼女はこういった。「ねぇ。お願いがあるの。」
彼女は上目遣いでそう俺に言った。意識していなかったが彼女は
キャミ一枚ととても肌の露出を強調した服装であった。髪の毛は
おろしてセミロングのストレートヘアになっていた。少しスパイシーな香水のに匂いがつんと俺の鼻をかすめる。「なんだよ?」
俺は彼女の目をみないでいった。下心を見透かされたくなかった
からだろうか。自分ではわからない。ただ見ることができなかった
のだ。彼女は俺の顔に急接近してきた途端に踵をかえし
ソファからたつと7階の出窓のカーテンを無造作に引いた。
「私、2週間前から5階の人につけられてる気がするの。」
俺は彼女の横に行って窓の外をのぞいた。すると光の点滅の
ようなものが見えた。「あれは。あれは望遠鏡じゃねーか?」
誰がみても一目瞭然であった。「なるほど。それで俺におまえの
ボディガードを依頼するためここに呼んだってわけか。」
俺は少しの安堵と残念な気持ちが入り混じった。そして少し
下心があった自分にへこんでいた。「まぁそういうことね。」
「でもなんで俺に頼むんだよ?」身長は184cmあるがお世辞に
もがたいがいいとはいえない俺になぜ彼女は依頼してきたんだろう。そう思って率直な思いを彼女にぶつけてみた。
「春樹クンは私のことを理解してくれてる気がしたの。
あくまで私の勘だけどね。」そういって彼女はカーテンを閉めて
俺の顔を覗き込んだ。いつもの笑顔だがその裏にふとした憂いの
表情が見え隠れする。彼女の闇を俺は感じ取った。
よくミステリアスな女の子はもてるといったことを高校時代
にツレと話していたがまさに彼女はその代表といった感じだった。
俺は自信はなかったが、彼女に近づきたいという思いから首を
縦に振った。「じゃあ話は早いな。」俺は彼女がつけられてる
ということを知っている以上さっきの紙切れを見せることにした。
「これさっき俺が乗り合わせたエレベーターの男が落とした
もんだ。おまえのこと異常なくらい調べ上げてるぜ。」
相沢の顔をみないで俺はそう言い放った。彼女は沈黙しながら
ただ呆然と立っていた。
to be continued....
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