水平線 3話(5) 全5話
2005年11月24日 小説 随筆-------------------------------------------
俺はいつものようにサブ、達也たちと講義をうけていた。
教授は熱弁しているが、学生のほうは完全におざなりだ。
サブと達也はいつものように熟睡している。俺は少し興味
のある話だったので教授の話を聞いていた。確か、ドゥルケム
のアノミー論の類のはなしだ。裕福で暇をもてあましている国
のほうが貧しい国よりも自殺率が高いそうだ。なんとなく俺自身
にその話は合ってるなと思ってしまった。ふと集中力が途切れ
視線を右斜め前に移す。するとレナも同じ教室にいた。
相変わらず露出度が高い格好である。
チャイムがなり教授は講義を終えると足早に
教室を出て行った。俺はレナのほうに近づいていって「よう。」と
言った。「あ、春樹君。帰ってきたんだ。」
「おうよ。」俺は元気に答えた。
「今日時間空いてる?」レナは俺の耳にそう囁いた。
「今日はバイトだ。わりぃ。」
「なーんだ付き合い悪いんだから。」レナは口を尖らせて言った。
-----------------------------
「おはようございます!!」俺は元気よく声を出した。
結構ここでの仕事も長い。なんの仕事というと、TV局でのアシスタントのバイトだ。地下鉄メトロ線でお台場へとバイトの日はむかう。
バイト先のディレクターさんは恐い人でよく俺のことを叱るが、非常に引き出しの多い人で俺は尊敬していた。
そして、様々な事ををここで吸収して成長していた。
今日もスタジオでのドラマ撮影の収録を手伝っていた。
「ぜってー視聴率とれなきゃいけねーんだよ!!」
ADの村田さんはそればかり
口癖にしていた。この業界のシビアな現実をバイトという気楽な立場の俺にも感じさせた。
バイトが終わり疲れきってノジTVをでると自動ドアの前になんとレナが立っていた。
「なにしてんだよ!そんなとこで!?」俺は思わず素っ頓狂なトーンで言った。
「なにってみりゃわかるじゃない。待ってたの」レナは不機嫌さまるだしで言う。
「待ってたっておまえさ。そんな格好で寒いだろ?ったく。しゃあないな。」
俺はノジTV警備員に社員証を見せてもう一度ビルのロビーへとむかう。
「あっこいつ俺の連れなんですけどいっしょにいれてやってもいいですかね。すぐ
に出ますんで。」
そう俺がいうと警備員さんは
柔和な笑顔で「もちろん。いいですよ」と言ってくれた。俺は「お疲れ様です。」
と笑顔でかるく会釈した。俺はレナを連れてロビーまで行く。
ゴトン。鈍い音がして缶コーヒーが取り出し口に落ちる。俺は身をかがめて缶を2つ分
とりだす。「ほいっ。」 俺は缶コーヒーをレナに投げた。
警備員にもう一度会釈してからノジTV局をでる。
駐車場まで歩いていき俺のバイクの前までくると「よし。乗れ。」と俺が言う。
メットはこれだからとこれまたレナにむかって投げた。
レナはコーヒーをこぼさないように抱くようにメットをキャッチした。
「なんでも放り投げないでよ!」
そしてバイクに乗るのを確認して俺は、勢いよくエンジン音をならし
バイクを走らせた。お台場を抜け出し湾岸線を快調に飛ばす。30分ほどとばして
東京湾まで来た。そして俺はバイクを止めて「うーさみぃー」といいながら
堤防までレナといっしょに歩く。沈黙が続いたあとそれをかき消すかのようにレナが口を開いた。
「ねえ。なんでこんなとこきたの?」その堤防からレインボーブリッジが夜景に
彩られてゆれていた。そんなことはお構いなしにといわんばかりに
俺は缶コーヒーをぷしゅっと開けながら言った。
「おまえさ。まえ言ってたじゃん。男なんて女を道具としかみてねーとか
なんとかってさ。」さらに俺はマイルドセヴンに火をつける。気にせず俺は続ける。
「別にお前の価値観をどうこういうつもりはねーけどさ。おまえ本当に
好きになったやつに出会ったことねーだろ?」俺は敢えて冷たい声で言った。
「は?なんなの。こんなとこまで来て私にイヤミをいいたかったわけ?」
レナは顔をふくらましながら言う。
「まぁどうかしんねーけどさ、レナにはもっとふさわしい相手がいると思うぜ。」
レナは黙り込んだ。そして堤防にもたれて空をみた。オリオン座が俺らのちょうど頭の真上で輝いている。
「私ね。実は、本当の娘じゃないんだ。」
レナはふいにそう言った。
俺は黙って聞いていた。
「私のお父さんって外資系の証券マンで出張ばっかでさ。私が高校くらいの時にお母さんとお父さんが喧嘩で言い合いをしてるときに聞いちゃったの。愛人がいるとかどうたらでお母さんがそのことでいきりたっていきなり私のことを持ち出したの。」
今日はいつになく心を開いて話すレナに俺はすこし困惑していた。そのせいかタバコを吸うペースが速くなった。
「それで、お母さん、お父さんにむかって「あんたの愛人がレイプされてできた娘を私が
ここまで一人で育ててきたのにまだ愛人をつくるき!?いったい私はあなたにとって
なんなの!!」って半狂乱な声でいったの。」俺は生唾を飲んだ。一瞬表情をゆがめたが
すぐにいつもの冷静な顔に戻した。
「ドア越しからその話を聞いていた私は体が震えて崩れそう
になった。私はどこの誰ともわからない男と父親の愛人との間に生まれた子なんだって。
本当の両親と信じていたのに、嘘だと思いたかった。」
俺はこのときになってようやくレナが高校時代に荒れていた噂話の動機をすこし理解で
きたきがした。俺はちきしょという苦虫をつぶしたような顔をしたあとこういった。
「なーに悲劇のヒロインですって面してんだよ。」
「な、なによそれ!」レナはふくれっつらで言った。
「なぐさめてって顔にかいてあんぞ。」俺はレナの顔を覗き込んで
いった。「いいか。レナ。誰にでも一度はそういう挫折があんだよ。」
「なにえらそうなこといってんのよ。」レナは俺に後ろ姿をみせていった。
「怖かったさ。」俺はそう突然呟いた。レナに聞いてもらうわけでもなく。
「??」レナは黙っていた。
「もう俺の母親がさ。死ぬってわかって俺でなんとかこれから
していかなきゃなんねえ
ってわかったとき。すげえ怖かった。」
「なんなのそれ?」
「俺の母親は俺が12歳のとき、死んだんだ。」俺は続けた。
「親父は仕事にのめりこんでいったよ。きっと寂しさをまぎらわすためだったん
だろうな。俺もさ、すげえやけになりそうだったよ。実際チンピラ予備軍みてえ
にもなった。でもさ、ある日俺が夜遊びして朝帰りして家に戻るとさ。
親父がネクタイしたままソファーで寝ててさ。そこに置手紙があったんだよ。
俺は親父がおきねえようにそっと自分の部屋にその手紙を持ち込んでよんだんだ。」
春樹へ。
おまえにはいつもつらい思いをさせてきた。本当にすまない。
母さんが死んでからおまえには
いい母親役を俺ができていたかはわからない。でもな俺はおまえに幸せになってもら
いたい。好きに生きろ。おまえのやりたいようにな。父さんはおまえが夢に
むかって生きることを期待しるよ。これからもよろしくな。
父より
俺はいつものようにサブ、達也たちと講義をうけていた。
教授は熱弁しているが、学生のほうは完全におざなりだ。
サブと達也はいつものように熟睡している。俺は少し興味
のある話だったので教授の話を聞いていた。確か、ドゥルケム
のアノミー論の類のはなしだ。裕福で暇をもてあましている国
のほうが貧しい国よりも自殺率が高いそうだ。なんとなく俺自身
にその話は合ってるなと思ってしまった。ふと集中力が途切れ
視線を右斜め前に移す。するとレナも同じ教室にいた。
相変わらず露出度が高い格好である。
チャイムがなり教授は講義を終えると足早に
教室を出て行った。俺はレナのほうに近づいていって「よう。」と
言った。「あ、春樹君。帰ってきたんだ。」
「おうよ。」俺は元気に答えた。
「今日時間空いてる?」レナは俺の耳にそう囁いた。
「今日はバイトだ。わりぃ。」
「なーんだ付き合い悪いんだから。」レナは口を尖らせて言った。
-----------------------------
「おはようございます!!」俺は元気よく声を出した。
結構ここでの仕事も長い。なんの仕事というと、TV局でのアシスタントのバイトだ。地下鉄メトロ線でお台場へとバイトの日はむかう。
バイト先のディレクターさんは恐い人でよく俺のことを叱るが、非常に引き出しの多い人で俺は尊敬していた。
そして、様々な事ををここで吸収して成長していた。
今日もスタジオでのドラマ撮影の収録を手伝っていた。
「ぜってー視聴率とれなきゃいけねーんだよ!!」
ADの村田さんはそればかり
口癖にしていた。この業界のシビアな現実をバイトという気楽な立場の俺にも感じさせた。
バイトが終わり疲れきってノジTVをでると自動ドアの前になんとレナが立っていた。
「なにしてんだよ!そんなとこで!?」俺は思わず素っ頓狂なトーンで言った。
「なにってみりゃわかるじゃない。待ってたの」レナは不機嫌さまるだしで言う。
「待ってたっておまえさ。そんな格好で寒いだろ?ったく。しゃあないな。」
俺はノジTV警備員に社員証を見せてもう一度ビルのロビーへとむかう。
「あっこいつ俺の連れなんですけどいっしょにいれてやってもいいですかね。すぐ
に出ますんで。」
そう俺がいうと警備員さんは
柔和な笑顔で「もちろん。いいですよ」と言ってくれた。俺は「お疲れ様です。」
と笑顔でかるく会釈した。俺はレナを連れてロビーまで行く。
ゴトン。鈍い音がして缶コーヒーが取り出し口に落ちる。俺は身をかがめて缶を2つ分
とりだす。「ほいっ。」 俺は缶コーヒーをレナに投げた。
警備員にもう一度会釈してからノジTV局をでる。
駐車場まで歩いていき俺のバイクの前までくると「よし。乗れ。」と俺が言う。
メットはこれだからとこれまたレナにむかって投げた。
レナはコーヒーをこぼさないように抱くようにメットをキャッチした。
「なんでも放り投げないでよ!」
そしてバイクに乗るのを確認して俺は、勢いよくエンジン音をならし
バイクを走らせた。お台場を抜け出し湾岸線を快調に飛ばす。30分ほどとばして
東京湾まで来た。そして俺はバイクを止めて「うーさみぃー」といいながら
堤防までレナといっしょに歩く。沈黙が続いたあとそれをかき消すかのようにレナが口を開いた。
「ねえ。なんでこんなとこきたの?」その堤防からレインボーブリッジが夜景に
彩られてゆれていた。そんなことはお構いなしにといわんばかりに
俺は缶コーヒーをぷしゅっと開けながら言った。
「おまえさ。まえ言ってたじゃん。男なんて女を道具としかみてねーとか
なんとかってさ。」さらに俺はマイルドセヴンに火をつける。気にせず俺は続ける。
「別にお前の価値観をどうこういうつもりはねーけどさ。おまえ本当に
好きになったやつに出会ったことねーだろ?」俺は敢えて冷たい声で言った。
「は?なんなの。こんなとこまで来て私にイヤミをいいたかったわけ?」
レナは顔をふくらましながら言う。
「まぁどうかしんねーけどさ、レナにはもっとふさわしい相手がいると思うぜ。」
レナは黙り込んだ。そして堤防にもたれて空をみた。オリオン座が俺らのちょうど頭の真上で輝いている。
「私ね。実は、本当の娘じゃないんだ。」
レナはふいにそう言った。
俺は黙って聞いていた。
「私のお父さんって外資系の証券マンで出張ばっかでさ。私が高校くらいの時にお母さんとお父さんが喧嘩で言い合いをしてるときに聞いちゃったの。愛人がいるとかどうたらでお母さんがそのことでいきりたっていきなり私のことを持ち出したの。」
今日はいつになく心を開いて話すレナに俺はすこし困惑していた。そのせいかタバコを吸うペースが速くなった。
「それで、お母さん、お父さんにむかって「あんたの愛人がレイプされてできた娘を私が
ここまで一人で育ててきたのにまだ愛人をつくるき!?いったい私はあなたにとって
なんなの!!」って半狂乱な声でいったの。」俺は生唾を飲んだ。一瞬表情をゆがめたが
すぐにいつもの冷静な顔に戻した。
「ドア越しからその話を聞いていた私は体が震えて崩れそう
になった。私はどこの誰ともわからない男と父親の愛人との間に生まれた子なんだって。
本当の両親と信じていたのに、嘘だと思いたかった。」
俺はこのときになってようやくレナが高校時代に荒れていた噂話の動機をすこし理解で
きたきがした。俺はちきしょという苦虫をつぶしたような顔をしたあとこういった。
「なーに悲劇のヒロインですって面してんだよ。」
「な、なによそれ!」レナはふくれっつらで言った。
「なぐさめてって顔にかいてあんぞ。」俺はレナの顔を覗き込んで
いった。「いいか。レナ。誰にでも一度はそういう挫折があんだよ。」
「なにえらそうなこといってんのよ。」レナは俺に後ろ姿をみせていった。
「怖かったさ。」俺はそう突然呟いた。レナに聞いてもらうわけでもなく。
「??」レナは黙っていた。
「もう俺の母親がさ。死ぬってわかって俺でなんとかこれから
していかなきゃなんねえ
ってわかったとき。すげえ怖かった。」
「なんなのそれ?」
「俺の母親は俺が12歳のとき、死んだんだ。」俺は続けた。
「親父は仕事にのめりこんでいったよ。きっと寂しさをまぎらわすためだったん
だろうな。俺もさ、すげえやけになりそうだったよ。実際チンピラ予備軍みてえ
にもなった。でもさ、ある日俺が夜遊びして朝帰りして家に戻るとさ。
親父がネクタイしたままソファーで寝ててさ。そこに置手紙があったんだよ。
俺は親父がおきねえようにそっと自分の部屋にその手紙を持ち込んでよんだんだ。」
春樹へ。
おまえにはいつもつらい思いをさせてきた。本当にすまない。
母さんが死んでからおまえには
いい母親役を俺ができていたかはわからない。でもな俺はおまえに幸せになってもら
いたい。好きに生きろ。おまえのやりたいようにな。父さんはおまえが夢に
むかって生きることを期待しるよ。これからもよろしくな。
父より
コメント