第4話(5)
緑が生い茂った木々の中にあるビジネス街。その一角のカフェで待ち合わせて
いた。入り口に入ると一人ぽつんと寂しそうな背中をむけているレナ。
すぐにレナだとわかった。こういう異国の中では日本人同士共鳴しあって
しまうからだろうか。少しレナを見つけた瞬間、安堵と切なさが入
り混じって
精製された感情が湧き出す。彼女はコーヒーをスプーンでかき混ぜていた。
俺は肩に手をぽんっと後ろから軽く乗せてから向かい側の席に
「座っていいか?」と聞いてから座った。
まじまじとレナを改めてみる。日本にいるときにはきづかなかったが
レナの瞳はよく見ると透き通ったエメラルドのような色をしていた。
「・・・・久しぶりね。」
「そうだな。」俺はウエイトレスが近づくのみてすいません同じのひとつ
とオーダーした。
「それで・・」俺はそこで口をつぐんだ。
「春樹君、少しやせた?」
急なレナの言葉に俺はまたも困惑させられる。
彼女はいつだってペースを
乱すところがある。
それは彼女の魅力と同時に欠点だった。
「そうか?こっちきて不規則な生活してるからかもな。」
コーヒーが運ばれてきてウエイトレスが丁寧にテーブルにカップを
おく。俺は軽く会釈をした。そして、多めに砂糖を入れる。
「俺って昔から甘党なんだよなあ。」
レナはくすっと笑う。笑ったときに目が糸みたいになる。
普段はぱっちりした目がその糸になると俺はうれしくなる。
「そうなんだ。春樹くんって女の子みたいだね。」
すこし茶化された気がしたので俺は頭を掻いた。
「春樹君ってさ、普通の人にない何かをもっている気がする。」
「何か?」俺はレナの目を見て言う。
「うん。上手くはいえないけど、相手の心を見抜いてそれを
うまくリードするっていうのかな。」
自分のいいところ悪いところっていうのは自分が一番わかっている
ようでわかっていない。
「リードねぇ。レナも普通の女の子とは違うな。なんつーか
どれだけしゃべっててもつかみきれないっつうか。
どこまでが本音なのかわからない。」
俺は本心で語った。
「どういうこと?」レナはコーヒーを上品に啜りながら上目遣いで言う。
「うーん。なんだろ。いっしょにずっと居て話してもレナのことはわか
らないってことさ。つまり、そーだなあ。用は何を考えているか分からない。」
そこでしばらく沈黙が流れる。
たまに俺はこういう人種に出くわす。あまり自分の思っていることを口に
しないタイプだろうか。昔俺の友人の中にもいた。彼は意識的に自分のことを
言わないのかは分からないがどんな人か分からずじまいだった。
レナにはそれに似たものを覚える。
「分からないねえ。確かに私って、あんまりおおっぴらにしない人だから。」
レナは物憂げな表情で言った。
「春樹君がさらけだせって言ったけど私にはそれはできないかも。」
「あせることはねーよ。人間ってそんなすぐ変わるものじゃねーし。」
俺は肩の力をぬけよというジェスチャーをしてタバコに火をつけた。
「それで、親父とは話せたのか?」
「まだ。今日の22時に会議が終わるから会社までいこうと思ってる。」
「で。俺についてきてほしいって?」
「そーいうことね。」
俺は笑顔でコーヒーの香りを楽しんだ。
「お安い御用で。」
「で。知子ちゃんはどうなの?」レナは言いにくそうだった。
「気にすんなよ。レナは親父のことだけ考えてな。」
そういって俺はレナの頭に手をぽんっと乗せて会計を済ませた。
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高層ビルがそびえたつビジネス街であるウォール街に俺らは
来た。スーツでびしっと決め手できる男や女が歩いている中で
俺たちの存在は明らかに浮いていた。
レナの親父が勤めてるニューエクスプレス証券会社の高層ビルの前に
俺たちは立っていた。
「待って。お父さんが一人になったときに行きたいの。」
俺は黙って彼女を見守っていた。
「会社の前はやべーよな。」
そして俺はこう付け加えた。
「レナ、親父の家わかんねーのか??」
「出張中はホテルに泊まっているの。」
「ホテル名はわかるのか?」
レナは手帳を取り出した。
ビジネスホテル:RIVER SIDE
そう殴り書きされたページを開いて場所を確認している。
「その前にいこうか?」俺はレナの判断を待った。
「・・・そうだね。きっと会社の前なら秘書とかSPに
取り囲まれるだろうし。」
「レナ。真実を確認したいのか?」
これ以上彼女に冒険をさせていいのか。
見たくないものまで見る必要があるのか。
知りたくないことまで知る必要があるのか。
「そのためにNYまでわざわざ来たんだから。」
レナはしっかり俺のほうをみて強く言った。
その表情をみて俺はついていくことにした。
だが、強気な彼女だったがそれは素振りであることを
俺は見抜いていた。実は彼女がかすかに震えていた
から。後は彼女の意志を尊重するのみだろう。
殺伐としたウォール街を後にしてタクシーで
ブルジョワジーたちの高級ホテル街へと繰り出す。
静かな空気の中で俺は息を吸い込む。肺の中まで
汚れた空気が浸透していく。汚い大人たちのように
俺もなっていくのだろうか。島根に戻りたいとふと
俺はおもう。
ホテル「リバーサイド」まで俺たちは来た。
壮大な概観でプールまで付いていた。白い色を基調とした
レンガ造りで歴史ある空間を作り出すために独自の
加工が施されている。
さっきからだまったままのレナの後ろ姿を俺は一瞥する。
取締役のような貫禄のある男がロビーに入ってきた。
男はきれいに整髪されたオールバックに、厳かな表情
できびきび歩いている。少し神経質そうな感じだ。
その男をみているとレナがふいに言った。
「あれが、私の父親よ。」
to be continued……
緑が生い茂った木々の中にあるビジネス街。その一角のカフェで待ち合わせて
いた。入り口に入ると一人ぽつんと寂しそうな背中をむけているレナ。
すぐにレナだとわかった。こういう異国の中では日本人同士共鳴しあって
しまうからだろうか。少しレナを見つけた瞬間、安堵と切なさが入
り混じって
精製された感情が湧き出す。彼女はコーヒーをスプーンでかき混ぜていた。
俺は肩に手をぽんっと後ろから軽く乗せてから向かい側の席に
「座っていいか?」と聞いてから座った。
まじまじとレナを改めてみる。日本にいるときにはきづかなかったが
レナの瞳はよく見ると透き通ったエメラルドのような色をしていた。
「・・・・久しぶりね。」
「そうだな。」俺はウエイトレスが近づくのみてすいません同じのひとつ
とオーダーした。
「それで・・」俺はそこで口をつぐんだ。
「春樹君、少しやせた?」
急なレナの言葉に俺はまたも困惑させられる。
彼女はいつだってペースを
乱すところがある。
それは彼女の魅力と同時に欠点だった。
「そうか?こっちきて不規則な生活してるからかもな。」
コーヒーが運ばれてきてウエイトレスが丁寧にテーブルにカップを
おく。俺は軽く会釈をした。そして、多めに砂糖を入れる。
「俺って昔から甘党なんだよなあ。」
レナはくすっと笑う。笑ったときに目が糸みたいになる。
普段はぱっちりした目がその糸になると俺はうれしくなる。
「そうなんだ。春樹くんって女の子みたいだね。」
すこし茶化された気がしたので俺は頭を掻いた。
「春樹君ってさ、普通の人にない何かをもっている気がする。」
「何か?」俺はレナの目を見て言う。
「うん。上手くはいえないけど、相手の心を見抜いてそれを
うまくリードするっていうのかな。」
自分のいいところ悪いところっていうのは自分が一番わかっている
ようでわかっていない。
「リードねぇ。レナも普通の女の子とは違うな。なんつーか
どれだけしゃべっててもつかみきれないっつうか。
どこまでが本音なのかわからない。」
俺は本心で語った。
「どういうこと?」レナはコーヒーを上品に啜りながら上目遣いで言う。
「うーん。なんだろ。いっしょにずっと居て話してもレナのことはわか
らないってことさ。つまり、そーだなあ。用は何を考えているか分からない。」
そこでしばらく沈黙が流れる。
たまに俺はこういう人種に出くわす。あまり自分の思っていることを口に
しないタイプだろうか。昔俺の友人の中にもいた。彼は意識的に自分のことを
言わないのかは分からないがどんな人か分からずじまいだった。
レナにはそれに似たものを覚える。
「分からないねえ。確かに私って、あんまりおおっぴらにしない人だから。」
レナは物憂げな表情で言った。
「春樹君がさらけだせって言ったけど私にはそれはできないかも。」
「あせることはねーよ。人間ってそんなすぐ変わるものじゃねーし。」
俺は肩の力をぬけよというジェスチャーをしてタバコに火をつけた。
「それで、親父とは話せたのか?」
「まだ。今日の22時に会議が終わるから会社までいこうと思ってる。」
「で。俺についてきてほしいって?」
「そーいうことね。」
俺は笑顔でコーヒーの香りを楽しんだ。
「お安い御用で。」
「で。知子ちゃんはどうなの?」レナは言いにくそうだった。
「気にすんなよ。レナは親父のことだけ考えてな。」
そういって俺はレナの頭に手をぽんっと乗せて会計を済ませた。
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高層ビルがそびえたつビジネス街であるウォール街に俺らは
来た。スーツでびしっと決め手できる男や女が歩いている中で
俺たちの存在は明らかに浮いていた。
レナの親父が勤めてるニューエクスプレス証券会社の高層ビルの前に
俺たちは立っていた。
「待って。お父さんが一人になったときに行きたいの。」
俺は黙って彼女を見守っていた。
「会社の前はやべーよな。」
そして俺はこう付け加えた。
「レナ、親父の家わかんねーのか??」
「出張中はホテルに泊まっているの。」
「ホテル名はわかるのか?」
レナは手帳を取り出した。
ビジネスホテル:RIVER SIDE
そう殴り書きされたページを開いて場所を確認している。
「その前にいこうか?」俺はレナの判断を待った。
「・・・そうだね。きっと会社の前なら秘書とかSPに
取り囲まれるだろうし。」
「レナ。真実を確認したいのか?」
これ以上彼女に冒険をさせていいのか。
見たくないものまで見る必要があるのか。
知りたくないことまで知る必要があるのか。
「そのためにNYまでわざわざ来たんだから。」
レナはしっかり俺のほうをみて強く言った。
その表情をみて俺はついていくことにした。
だが、強気な彼女だったがそれは素振りであることを
俺は見抜いていた。実は彼女がかすかに震えていた
から。後は彼女の意志を尊重するのみだろう。
殺伐としたウォール街を後にしてタクシーで
ブルジョワジーたちの高級ホテル街へと繰り出す。
静かな空気の中で俺は息を吸い込む。肺の中まで
汚れた空気が浸透していく。汚い大人たちのように
俺もなっていくのだろうか。島根に戻りたいとふと
俺はおもう。
ホテル「リバーサイド」まで俺たちは来た。
壮大な概観でプールまで付いていた。白い色を基調とした
レンガ造りで歴史ある空間を作り出すために独自の
加工が施されている。
さっきからだまったままのレナの後ろ姿を俺は一瞥する。
取締役のような貫禄のある男がロビーに入ってきた。
男はきれいに整髪されたオールバックに、厳かな表情
できびきび歩いている。少し神経質そうな感じだ。
その男をみているとレナがふいに言った。
「あれが、私の父親よ。」
to be continued……
コメント
でもグダグダどころかクライマックスはまだまだ先
ですので楽しみにしておいてください。