Fight for your light
第4話(6)
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札束は廊下一面に散らばった。
レナと俺はその中で二人きりだった。
こんなに傍に父親がいるのにまともに話せないレナ。
時はそれでも流れていく。どんな難問でも時間が解決してくれる。
誰かがそんなことを言った。果たしてそうなのだろうか。
いつまでたっても解決しない問題もあるんじゃないか。
俺は足元を覆い尽くす札束を蹴散らした。
10代のころのような鈍いそして体全身を襲う不安定なホルモンで
満たされていく。
そこに救いは一切なかった。
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俺たちはホテルを後にして、あてもなく歩き続いた。
スラム街ではストリートチルドレンで溢れ返っていた。
時々俺はこっちにきてもjapan timesを読む。
日本では今、女児を狙った事件が頻繁に起こっている。
「腐ってやがる」
俺は憤りを覚えた。一連の事件は、
まるで無数のコーヒーの無糖の苦味をそのままスプーンでかき混ぜ続け無限にループするかのように、
そのまま永遠に癒えることのない痛みを被害者の遺族にこのまま与えつづけるのだろう。
「レナ。」さっきからレナは死んだような目でただ歩き続けている。
俺はレナの背中ごしに彼女の孤独感を感じ取った。
ずっと一人で生きてきたという空気をリアルにそして嫌というほど切り刻まれた
肉片のようにただレナは歩いている。
ふと俺が目をそらした瞬間。レナが消えた。狭い路地裏を横に入っていったようだ。
「レナ!!!!」俺は息を切らしながらレナの後を追った。
レナはシャツの袖をまくりあげて黒人につきだしていた。彼女の英語はネイティブなみであったが間違いなくここに注射をうてという意味なのは見て取れてわかった。
「レナ!!!やめろ!」俺は黒人とレナの間に割って入った。
大粒の汗が滴り落ちどんよりとした下水管へと落ちてゆく。
レナは相変わらず、虚ろな目をしたままふらふらしている。
「ドラッグだけには手をだすな!!!」
そういって俺はレナの腕を引きずって路地裏からつまみだした。
黒人の罵声が背中に迫ってくる。
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明けない夜などない。
どんな苦しい夜も。
どんなに切ない夜でも。
昔、母がよく聞いていたカーペンターズの「青春の輝き」を口ずさみ
ながら俺はこの密林のような街を歩き続けた。
背中にレナを背負って。
誘惑だらけの街。片言の日本語で客引きしてくる娼婦たち。
派手な化粧をして幾人もの多国籍娼婦がこのストリートに立っていた。
スロットの前に座り続ける空虚な住民。
すべてが細菌に感染したようにこの街は何かが狂っていた。
何もかも規格外の中に置かれたような鈍い痛みを俺はいつも感じている。
それは異国だからとかそういうものではない。
知子のことでもない。
俺はどうしても吐き出せない感情がいつだってある。
気づいたらいつだって誰かが手を差し伸べてくれる時代は終わった。
背中に暖かいぬくもりがあるのだけが今のレナの存在を確かめる唯一の方法だった。
かじかんだ手。いつも俺は繋がっていると思っていた。でもそれは違った。
レナも父親に愛されたかったんだろう。かなわぬ想いを胸に秘め泣きつかれすやすや
と寝ているレナの素顔は純粋な少女そのものであった。
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これ以上、細菌が増え続けるのを止めなくてはならない。
俺は戦わなければならない。
痛みさえ忘れて。どんな憤りも噛み殺し針となりそれは
やがて体中に毒として回っていっても。
狂うことなく俺は俺の歩む道を進むだけだ。
レナを背負いなおし俺は自分の歩いてきた足跡を振り返って
少し和らいだ笑顔を浮かべた。
To be continued….
エンディング曲:「Sucide is painless 」
by マニックス
第4話(6)
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札束は廊下一面に散らばった。
レナと俺はその中で二人きりだった。
こんなに傍に父親がいるのにまともに話せないレナ。
時はそれでも流れていく。どんな難問でも時間が解決してくれる。
誰かがそんなことを言った。果たしてそうなのだろうか。
いつまでたっても解決しない問題もあるんじゃないか。
俺は足元を覆い尽くす札束を蹴散らした。
10代のころのような鈍いそして体全身を襲う不安定なホルモンで
満たされていく。
そこに救いは一切なかった。
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俺たちはホテルを後にして、あてもなく歩き続いた。
スラム街ではストリートチルドレンで溢れ返っていた。
時々俺はこっちにきてもjapan timesを読む。
日本では今、女児を狙った事件が頻繁に起こっている。
「腐ってやがる」
俺は憤りを覚えた。一連の事件は、
まるで無数のコーヒーの無糖の苦味をそのままスプーンでかき混ぜ続け無限にループするかのように、
そのまま永遠に癒えることのない痛みを被害者の遺族にこのまま与えつづけるのだろう。
「レナ。」さっきからレナは死んだような目でただ歩き続けている。
俺はレナの背中ごしに彼女の孤独感を感じ取った。
ずっと一人で生きてきたという空気をリアルにそして嫌というほど切り刻まれた
肉片のようにただレナは歩いている。
ふと俺が目をそらした瞬間。レナが消えた。狭い路地裏を横に入っていったようだ。
「レナ!!!!」俺は息を切らしながらレナの後を追った。
レナはシャツの袖をまくりあげて黒人につきだしていた。彼女の英語はネイティブなみであったが間違いなくここに注射をうてという意味なのは見て取れてわかった。
「レナ!!!やめろ!」俺は黒人とレナの間に割って入った。
大粒の汗が滴り落ちどんよりとした下水管へと落ちてゆく。
レナは相変わらず、虚ろな目をしたままふらふらしている。
「ドラッグだけには手をだすな!!!」
そういって俺はレナの腕を引きずって路地裏からつまみだした。
黒人の罵声が背中に迫ってくる。
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明けない夜などない。
どんな苦しい夜も。
どんなに切ない夜でも。
昔、母がよく聞いていたカーペンターズの「青春の輝き」を口ずさみ
ながら俺はこの密林のような街を歩き続けた。
背中にレナを背負って。
誘惑だらけの街。片言の日本語で客引きしてくる娼婦たち。
派手な化粧をして幾人もの多国籍娼婦がこのストリートに立っていた。
スロットの前に座り続ける空虚な住民。
すべてが細菌に感染したようにこの街は何かが狂っていた。
何もかも規格外の中に置かれたような鈍い痛みを俺はいつも感じている。
それは異国だからとかそういうものではない。
知子のことでもない。
俺はどうしても吐き出せない感情がいつだってある。
気づいたらいつだって誰かが手を差し伸べてくれる時代は終わった。
背中に暖かいぬくもりがあるのだけが今のレナの存在を確かめる唯一の方法だった。
かじかんだ手。いつも俺は繋がっていると思っていた。でもそれは違った。
レナも父親に愛されたかったんだろう。かなわぬ想いを胸に秘め泣きつかれすやすや
と寝ているレナの素顔は純粋な少女そのものであった。
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これ以上、細菌が増え続けるのを止めなくてはならない。
俺は戦わなければならない。
痛みさえ忘れて。どんな憤りも噛み殺し針となりそれは
やがて体中に毒として回っていっても。
狂うことなく俺は俺の歩む道を進むだけだ。
レナを背負いなおし俺は自分の歩いてきた足跡を振り返って
少し和らいだ笑顔を浮かべた。
To be continued….
エンディング曲:「Sucide is painless 」
by マニックス
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