水平線

2005年12月27日 小説 随筆
第5話(3)
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サブは俺が振り返ると同時に立ち去っていった。
はじかれたように俺はレナから離れた。
 俺たちの間には今までのような雰囲気とはまったく異質
のものが流れていた。少なくとも俺はそう感じた。
レナもそう感じていたろう。俺はスーツケースを手に取ると
 「直哉が時々来てくれるからゆっくり休め。」とだけ
言うとその場を振り切るように外へと出た。出なければ
ならなかった。
一体、あのキスはなんだったんだろうか。雑踏の中俺は
ただ打ちのめされていた。
 怒り、喜び、悲しみ、虚しさ、挫折、妬み、そんな
今まで経験してきたありきたりの感覚とはどこか違う。
俺の中で起こっているのだけれど、どこか俺自身が他人事
と片付けてしまうあきらめにも似た感情だ。
それは幾多の挫折の中でなにかの拍子に紛れ込んできたような
突然変異である。
 俺は哲学者でも科学者でも啓蒙家でもない。

だが、こう叫びたい。
「この日常に埋没するなんてくそくらえだ。」
俺はそういって転がるコーラの空き缶を蹴飛ばした。

カランコロン。。

空き缶はみるにも忍びがたいドレッドヘアの少年の近くへ
と転がっていった。

少年の名は、嘉人と書いてよしとだ。
ヨシトはブレーキングダンスをやっていた。
俺が蹴った空き缶のせいでダンスを中断された
ヨシトは不機嫌な顔をして俺のところまできた。
でかいスーツケースを持ち考え事にふける俺を
まじまじとみつめた。

「おまえ、明昌大学のやつだろ?」
やつはくちゃくちゃガムを噛みながら見下した態度でいう。
「・・・」俺が黙っているとヨシトは続けて言う。
「まあ、いいけどよ。相沢レナには手をださないほうがいいぜ。
噂が広まってるんでね。社会忠告。」そういって相変わらず
ガムをくちゃくちゃ音をたてながらぷくっと膨らませて
やつは笑顔で肩をぽんっとなれなれしく叩いてきた。
「ださねーよ、バカヤロ。」俺の声は届いたかは
わからない。
「少し詳しく話を聞かせてくれ。」俺はお返しに
 肩をぽんっとたたいた。
           TO BE CONTINUED!!!



 

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