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今までに経験したことのないほどの長い夜明け
と共に俺は殺風景なベッドにいつの間にか、

横たわっていた。
いつもとなにか違う。違和感。
いつもいたあいつがいない。ぽっかりとした空間

が無常にも広がる。

「知子。」俺はなぜかそうつぶやいた。

今までになく会いたかった。

 もうこのム所からも出たかった。

 ただ会いたかった。

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 春樹へ。

 知子の手術は来週の火曜日に、私が執り行うことに
 した。助手にはSMAに非常に堪能したラッセルを
 チームに組ませる。安心してくれたまえ。

 私は、君が今刑務所にいるということを聞いた。
 君のことだから何か理由があってのことだろう。
 だが決して、人を殴ったということはどんなことであれ
 許されないことだ。罪をしっかり償いでてきてくれ
 そして知子と再会するんだ。
 知子と春樹の幸せを祈る。

                 コヴィーより

 
 最後まで読むとまたぼろベッドに身を投げ出した。

 「なぁ、一体いつまでこんな生活続くんだよ。
  トモ。おまえに会いてーよ。
  早くおまえと話したい。」

 ついでてしまう独り言。何に対し俺は言葉を発している

 んだ。手紙を握り締めると何故かとめどない涙が滲んで

 きた。理由なんかない。ただ、この半年いろいろあった

 ことが一片に巻き戻され切り刻まれ、俺の心に収まり

 きらなかった。それが涙としてこぼれ落ちたんだ。

 「ごちゃごちゃうるせーよ。」

 ふいに誰かが投げやりに言った。

 俺は聞き覚えのある声だと思い、ゆっくりと頭をもたげる。

 それは。ヨシトだった。

 「なーにが会いたいだ。バカヤろ。恋愛ドラマの見すぎ

 だっつーの。」ヨシトはジャージ姿に、ドレッドばっさり

 きって潔いベリーショートになっていた。

 「おまえ、どーしてここに?」俺は独り言を聞かれていた
 
 気恥ずかしさよりも驚きのほうで感情は揺れていた。

 「うっせーよ。ただな。これみてみ。」

 そういってヨシトが取り出したものはタバコのやまだった。

 「へっへっへ。これで一儲けすんのよ。」

 何か分からないが犯罪を起こして刑務所に入っているヨシト

 が楽しそうに見えた俺は、こいつの神経はどうなっているんだ

 と思ってしまう。

 「なんでかしんねーけどよ。おまえと相部屋になっちまったんだ

 よ。だりーわ。正直。しかもおまえ。前いたやつ自殺したって
 
 うわさがム所中でたってるって話じゃねーか。

 ほんと俺はびんぼーくじ引かされたぜ。」

 ヨシトはベッドにどかっと身を投げだした。

 捕まった理由は聞かないことにした。少なくとも今は。

 
 そんなわけでヨシトとのム所生活が始まったのだ。

 ある日、午後の仕事を終えて俺はくたくたに疲れきって

 いた。終礼後、消灯され俺は疲れきって、まどろんでいた。

 しかしなにやら音がするのだ。

 ぎしっ。ぎしっ。真っ暗で最初は分からなかったが
 
 ヨシトがなにやらしている。

 「なんだよ。。こっちは疲れてるのに。」俺は喉まで

 その言葉がでかかった。がその次の瞬間その言葉はどこかへ

 消え逆に賛美の言葉が飛び出してしまった。。

  「すげえ!!!!」

 前に少しみたことがあるが、ヨシトはまたブレークダンスを

 している。見事な技のコンビネーション。そして回転。

 華麗だった。鍛えられた二の腕を軸に足を旋回させる。

 ヨシトは汗をびっしょりカイテその一滴が光ってみえた。

 練習が終わった後やつに聞いた。

 「なぁ。なんでそこまで練習してんだ?」

 ヨシトは看守に見つからないようにタバコに火をつけて

 黙って寝てしまった。

 俺は人を起こしておいて何も言わないヨシトにむかついて

 それ以上何もいわずに眠りについた。

                  to be continued....
 

コメント

nophoto
ニックネーム無し
2006年1月3日2:27

すごい展開になったな

nophoto
TK
2006年1月3日20:18

ニックネームなしさん!コメントありがとう。
水平線にコメントくれたのはうれしいですね。
これからもいい意味で期待を裏切る展開
にしていくので楽しみにしておってください。

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