水平線

2006年1月7日 小説 随筆
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6−2

 その日の朝は、なんとも目覚めが悪かった。
 
 俺の探していた答え。それをみつけるために

 今日も一歩を踏み出す。夢を追いかけていた

 あのころ。そんな中で、何かを失い置き忘れ

 きてしまった。

 「おい、よそ見してんじゃねーよ。」

 汗だくのヨシトは、俺にいちいち難癖をつける。

 「あぁ。わるい。」

 「ぼーっとしてさぼってんなら独房にいくか?」

 「それだけは勘弁してください。」

 やっと朝の仕事が終わる。昼休憩の時に、俺と

 ヨシトはお互いの飯のうんちくを語っていた。

 そんな中、前のいじめの主犯の男。名前は確か

 三原だった気がする。その三原がなにやら

 こっちをみて周りの連れとひそひそ話しては
 
 俺たちのほうをちらちらと一瞥する。

 ヨシトはオーラをもつ男だったのでム所にはいっ

 た時から目立っていた。どうやら三原はそれが
 
 気に食わないらしい。

 「さっきからじろじろ見てきてうっとしーな。

 まずい飯がますますまずくなる。」ヨシトは飄々

 とした表情でそうもらす。

 「気にすんなよ。」

 そんな感じで何事もなく数週間が過ぎた。

 いつもの仕事をやっていると、看守がまた鬼の声で

 叫んだ。「誰だ!!!金庫の金を盗んだやつは!!!」

 どうやら刑務所の事務の金庫の金が盗まれたらしい。

 すると、三原が看守に言った。

 「そこにいる、ダンスおたくの黒川君がやったと思います。」

 ヨシトにいっせいに全員の視線が注がれる。

 俺も思わずヨシトをみる。

 ヨシトは、例の飄々とした表情で言った。

 「金?俺は盗んでないぜ。」

 そういったにもかかわらず看守はヨシトの腕をつかむ。

 二人係でずるずると引きずる。

 「おい!俺は金なんかぬすんでねーって!!!」

 「おまえのうわさは流れてるんだ。タバコをほかの囚人

 に流し込んで金儲けしてるそうじゃないか?おまえが

 犯人なのは疑いようがないんだよ。」

 「なんでそれとこれが関係あるんだよ!!」

 ヨシトの声はどんどん遠ざかっていく。 

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 呆然と立ち尽くす俺。

 ヨシトは独房に2週間入るという罰則が課されるらしい。

 俺はなにもかもふに落ちない思いの中でまた一人になった

 部屋の中で頭をかかえる。

 鈍い痛みがまた再発する。くそおやじに刺された瞬間がまた

 フラッシュバックする。俺はその度に体全体が震える。

 「ちくしょう・・・・」

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